Tim Heeney (Microsoft Services 上級プログラム マネージャー)

Marc Nivens (Exchange Server サポート上級エスカレーション エンジニア)

Lou Mandich (Microsoft Services Premier 上級フィールド エンジニア)

Exchange を段階的に移行して Exchange 2007 の内部設置型のメールボックスを Office 365 に移行した後も、Active Directory を使用してクラウドベースのユーザーを内部設置型の環境から管理する必要がある場合、内部設置型のメールボックスをメールが有効なユーザー (MEU) に変換する必要があります。それは、 Exchange の段階的な移行でメールボックスをクラウドに移行すると、以下の 2 つの状況が発生するためです。

• ユーザーが内部設置型のメールボックスとクラウド メールボックスを保有する。
• ユーザーの内部設置型のメールボックスに送信されたメールがクラウド メールボックスに転送される。 これは、移行プロセスの際に、内部設置型のメールボックスの TargetAddressプロパティにクラウド メールボックスのリモート ルーティング アドレスが設定されるために発生します。 そのため、ユーザーが電子メールにアクセスするには、クラウド メールボックスに接続する必要があります。

この動作によって、以下の 2 つの問題が発生します。

• ユーザーが Microsoft Outlook を使用してメールボックスを開くと、自動検出サービスは内部設置型のメールボックスに接続しようとするため、ユーザーはクラウド メールボックスに接続できなくなります。 クラウドに移行していないユーザーがいる場合、すべてのユーザーをクラウドに移行するまで、クラウドをポイントするように自動検出 CNAME レコードを設定することができません。
• すべての内部設置型のメールボックスをクラウドに移行した後、Exchange の使用を停止した場合、クラウド メールボックスにあるメッセージング関連のユーザー情報は失われます。 Microsoft Online Services ディレクトリ同期ツール (DirSync) を実行すると、クラウド メールボックス オブジェクトからデータ (プロキシ アドレスなど) が削除されます。これは、内部設置型のメールボックスが既に存在していないので、対応するクラウド メールボックスと一致させることができないためです。

これらの問題を解決するための最適なソリューションは、 ユーザーのメールボックスをクラウドに移行してから、内部設置型の環境で内部設置型のメールボックスを、メールが有効なユーザー (MEU) に変換することです。 内部設置型のメールボックスを MEU に変換すると、以下のようになります。

• クラウドベースのメールボックスのプロキシ アドレスが、新しい MEU にコピーされます。Exchange の使用を停止しても、これらのプロキシ アドレスは Active Directory に引き続き保持されます。
• MEU のプロパティにより、DirSync を使用して、対応するクラウド メールボックスと MEU を一致させることができます。
• ユーザーが新しい Outlook プロファイルを作成すると、自動検出サービスは MEU を使用して Outlook をクラウド メールボックスに接続します。

Microsoft は、Exchange 2007 のメールボックスを MEU に変換できる Windows PowerShell スクリプトを提供しています。 このスクリプトを実行すると、クラウドベースのメールボックスのプロキシ アドレスが、Active Directory 内にある MEU にコピーされます。 また、MEU のプロパティにより、DirSync を使用して、対応するクラウドのメールボックスと MEU を一致させることができます。

さらに、Microsoft は、クラウドベースのメールボックスから情報を収集する PowerShell スクリプトも提供しています。

これらの PowerShell スクリプトはどちらも、内部設置型の Exchange 環境の Exchange 管理シェル内で実行できます。

ベスト プラクティス: 移行バッチを実行するために、内部設置型のメールボックスを MEU に変換することをお勧めします。 Exchange の段階的な移行バッチが終了した後、バッチ内のすべてのメールボックスが正しく移行され、メールボックス アイテムとクラウドの初期同期が完了したことを確認したら、移行バッチでメールボックスを MEU に変換します。

スクリプトをダウンロードする

メールボックスを MEU に変換するために役立つスクリプトが用意されています。 以下のリンクをクリックしてスクリプトをダウンロードしてください。

• ExportO365UserInfo.ps1 - クラウド メールボックスの情報を収集し、CSV ファイルに保存します。 Exchange2007MBtoMEU.ps1 スクリプトは、この CSV ファイル内の情報を使用して MEU を一括作成します。
• Exchange2007MBtoMEU.ps1 - 内部設置型の Exchange 2007 メールボックスを MEU に変換します。

スクリプトの実行内容

各スクリプトの実行内容の概要を以下に示します。

ExportO365UserInfo.ps1

これは、Exchange の段階的な移行の際に移行したクラウド メールボックスに関する情報を収集する Windows PowerShell スクリプトです。 このスクリプトは CSV ファイルを使用して、バッチ処理対象のユーザーの範囲を判断します。 バッチ処理対象のユーザーを移行する際に使用した CSV ファイルと同じファイルを使用することをお勧めします。

ExportO365UserInfo スクリプトを実行すると、以下の処理が行われます。

• 入力 CSV ファイルに記載されているユーザーのクラウド メールボックスから、以下のプロパティが収集されます。
  • プライマリ SMTP アドレス
  • 対応する内部設置型のメールボックスのプライマリ SMTP アドレス
  • クラウド メールボックスのその他のプロキシ アドレス
  • LegacyExchangeDN
  • msExchMailboxGuid
• 収集されたプロパティは、Cloud.csv という名前の CSV ファイルに保存されます。

Exchange2007MBtoMEU.ps1

これは、メールボックスを MEU に変換する PowerShell スクリプトで、内部設置型の Exchange 2007 環境で実行します。 このスクリプトは、ExportO365UserInfo スクリプトによって出力された Cloud.csv ファイルを使用します。

Exchange2007MBtoMEU.ps1 スクリプトを実行すると、入力 CSV ファイル内に記載されている各メールボックスに対して、以下の処理が実行されます。

• 入力 CSV ファイルと内部設置型のメールボックスから情報を収集します。
• MEU に追加する、内部設置型のメールボックスとクラウド メールボックスのプロキシ アドレスの一覧を作成します。
• 内部設置型のメールボックスを削除します。
• MEU を作成し、以下のプロパティに値を設定します。
  • legacyExchangeDN - 内部設置型のメールボックスの値
  • mail - クラウド メールボックスのプライマリ SMTP
  • msExchMailboxGuid - 内部設置型のメールボックスの値
  • proxyAddresses - 内部設置型のメールボックスとクラウド メールボックスの両方の値
  • targetAddress - 内部設置型のメールボックスに設定されている、クラウド メールボックスのプライマリ SMTP の値

内部設置型のメールボックスを MEU に変換する手順

1.    ExportO365UserInfo.ps1、Exchange2007MBtoMEU.ps1、および移行バッチを実行するために使用する CSV ファイルを、内部設置型の環境の同じディレクトリにコピーします。

2.    移行用の CSV ファイルの名前を migration.csvに変更します。

3.    Exchange 管理シェルで以下のコマンドを実行します。 このスクリプトは、CSV ファイルが同じディレクトリにあり、migration.csvという名前であることを前提としています。

    .\ExportO365UserInfo.ps1

既存のセッションを使用するか、新しいセッションを開くように求めるメッセージが表示されます。

4.    「n」と入力し、Enterキーを押して新しいセッションを開きます。

5.    クラウド環境の管理者の資格情報を入力し、[OK] をクリックします。

        スクリプトが実行され、Cloud.csv ファイルが現在の作業ディレクトリに保存されます。

6.    新しい Exchange 管理シェル セッションで以下のコマンドを実行します。 このコマンドは、ExportO365UserInfo.ps1 と Cloud.csv が同じディレクトリにあることを前提としています。

    .\Exchange2007MBtoMEU.ps1 <内部設置型のドメイン コントローラーの FQDN>

例:

    .\Exchange2007MBtoMEU.ps1 DC1.contoso.com

        このスクリプトは、Cloud.csv に含まれているすべてのユーザーの内部設置型のメールボックスを MEU に変換します。

7.    新しい MEU が作成されたことを確認します。 [Active Directory ユーザーとコンピューター] で、次の操作を実行します。

1. [操作]、[検索] の順にクリックします。
2. [Exchange] タブをクリックします。
3. [Exchange 受信者のみ表示する] を選択し、[外部の電子メール アドレスを持つユーザー] を選択します。
4. [検索開始] をクリックします。

        MEU に変換されたメールボックスが [検索結果] の下に一覧表示されます。

8.    [Active Directory ユーザーとコンピューター]、ADSI エディター、または Ldp.exe を使用して、以下の MEU プロパティに正しい情報が入力されていることを確認します。

• legacyExchangeDN
• mail
• msExchMailboxGuid
• proxyAddresses
• targetAddress